あたらしいヘフナー(HI-500/1-SB)をたぶん日本で一番早く買った、そしてヘフナー社は倒産した
1.あたらしいヘフナー、HI-500/1-SB
大学時代からビートルズのコピーバンドをやっていた私が、それでもビートルズの象徴ともいうべきヘフナー社のバイオリンベースを持っていなかったのには、私なりのわけがある。弱冠二十歳に至る前から、私は「音楽とはオリジナルであるべきだ」と意気込んでいた。音楽を人前で演奏するからには、ビートルズも自分にとってはライバルであるべきなのに、ヘフナーのベースを使ってしまえば、自分がポール・マッカートニーのものまね芸人になってしまうような気がしていた。たとえオリジナルの曲を演奏していたとしても、「あ、この人はビートルズが好きなんだなあ」と思われてしまうことは必定。それはなんとも気恥ずかしかった。カバーはすれどもコピーはせず。演奏の実質はともかく、気持ちの上でだけは、そんな心構えでいた。もっとも、そんな理屈で自分をごまかしていただけで、高すぎて買えなかったというのが一番の理由だったかもしれないが。
そんな私が、今になってヘフナーを買おうと思いたったのにも、わけがある。ずっとバンド活動は続けてきた。しかし、齢をとるとともに、ベースが重くなってきたのだ。アニメソングやゲームソングの演奏で重宝していたアイバニーズの5弦ベースは、楽器屋に売り払った。フェンダーのジャズベースはいまだにライブやレコーディングの主力であるが、毎回の練習に持ち歩くにはちと思い。ここ数年はスタインバーガーを愛用していたが、コンパクトであるがソリッドボディなので、それなりには重い。そんなときにヘフナーのことを考えた。中空のホロウボディであり、高齢のポール・マッカートニーも軽々と抱えてライブをしている。ポール自身のヘフナーのお気に入りポイントも、「軽さ」であるという。一周回って、ポールと同じ理由でヘフナーを買おうとしている。これなら、ものまね芸人になってはいないのではなかろうか。いいじゃないか、と私は思った。
しばらく、ヘフナー社のオンラインカタログを眺めて過ごす日々がつづいた。ある日、カタログに新しいモデルがラインナップされていた。HI-500/1-SB. イグニションという、手に取りやすい価格帯のモデルでありながら、ポールの持っている500/1というモデルのベースにかなり近い仕様になっている。具体的には0フレットというシステム*1が採用されているし、ボディの塗装も「本家」に近い。この価格帯なら、気軽に練習やライブに持ち運ぶこともできる。*2カタログには「アメリカ、日本で発売」と堂々と書いてある。
これだ! と思った。早速、置いている楽器屋が近所にないか、検索してみた。ない。近所にないのではない。日本全国に1本もないのだ。どういうことだ。実は日本では販売されないのか。考えた末に、私は輸入代理店であるクロサワ楽器に連絡した。連絡をした翌日、「国内での販売予定はあるが、メーカーの準備中につき現在のところ入荷時期は未定」という内容の丁寧なメールが返ってきた。カタログにはすでに掲載されているのに、準備中で、入荷時期は未定? ヘフナー社は大丈夫なのだろうか。一抹の不安を覚える。この不安は、のちに最悪の形で的中することになる。
2.たぶん日本一早い購入
それからも毎日楽器屋の在庫を検索して過ごした。私がやっているバンド『精神ブラザーズ』*3の活動がちょうど一つの節目のライブを終え、練習にそこまで時間を割かなくてもよくなり、機材について考えたりする余裕が少し出てきた時期でもあった。
11月のある日のことであった。検索すると、なんと数件だけだが、国内に該当のモデルが入荷している。私が行ける範囲に、入荷した楽器屋があるだろうか。調べてみると、神田にあるMという楽器屋が1件だけヒットした。私は11月もまさに終わろうとする日曜日の昼に、楽器屋を訪れた。エレベーターを上がり、楽器屋の中に入ると、20本ほどのギターが行儀よく展示されていた。眺めてみる。リッケンバッカーのベースはあるが、ヘフナーのベースはない。もう買われてしまったのだろうか。そう考えていると、背後から声がした。
「あの、お目当ての楽器があってこられた感じですか?」
振り返ると、小柄な好々爺然とした店員が笑顔で立っていた。白髪の混じった長髪を後ろで結び、派手ながらの眼鏡の奥からは糸のような目がほほ笑んでいる。バンド文化に携わって50年、みたいな雰囲気である。いいじゃないか、と私は思った。
「ヘフナーのHI-500/1-SBという新しいイグニションモデルが入荷したというのを見たのですが」
とおずおずと申し出る。
「ああー、倉庫もありますので、ちょっと探してきますね」
と言うと、好々爺はどこかへ消えていった。壁のリッケンバッカーを眺めながら待つ。リッケンバッカーのベースも、魅力的な楽器だ。あの「ビートルズらしい」音色というのは、ほとんどこのリッケンバッカーから生み出されたのではないかと思う。アニメーション『フリクリ』*4でヒロインが振り回して青いリッケンバッカーがほしい、と思っている間に青いリッケンバッカーは廃盤になってしまった。まあいいさ、人生とはそういうものだ。などと思っているうちに、好々爺が帰ってきた。手ぶらである。悪い予感がした。
「あれ、HI-500/1-SBって、クラブベース*5じゃないよね」
と好々爺がつぶやく。突如、店の隅の空間からいらえが返ってきた。
「いや、バイオリンベースっすね」
店の隅に、機材とレジとPCに埋もれるようにして、若い店員が座っていたのである。気配を消していた「隅の店員」*6は、しかしなかなかの手練れらしく、すらすらと答えた。
「高級機のモデルに仕様を近づけた、かなり最近出たやつですよ」
「そうか。おかしいなあ」
と言いながら、好々爺が再び倉庫へと消えていく。今度は飾られているレッド・スペシャルを眺めながら待つことにした。レッド・スペシャル――いわずとしれたクイーンのブライアン・メイのギターだ。友人の家の古い暖炉の木をつかってつくられたという唯一無二のギターであり、数々のあまりにも特殊なスペックを有している。私が最初にバンドをやりたい!と思ったのは、中学生の頃、クイーンのCDから流れてくるあまりにもかっこよいギターソロを聴いてのことであった。ようし、このギターを買ってバンドを始めるぞ!と思った私は、しかし「このギター」が世界に一本だけの自作ギターであること、そのコピーモデルも目が飛び出るほどの値段であることに驚き、なんとかストラトキャスターを買ってあの音色を再現しようとしたものの、本物には近づけず、気づけばベースを弾くようになっていたのだ。そんな回想をしながら待っていると、好々爺が戻ってきた。
なんと、好々爺は大きな段ボール箱を抱えていた。
「届いたばかりでした」
と翁は言う。なんと、届いたばかりでまだアンパッキングもしていない状態であったらしい。目の前で翁が開封していく。昨今はやりの開封動画のようなものだ。まじまじと眺めながら待つ。中からきれいなヘフナーが姿を現した。開封されたばかりなのだから、そりゃきれいなはずである。
「ちょっとセッティングしてもらっていいかな」
翁が「隅の店員」に声をかけ、「隅の店員」は無言でうなずくと調整を開始した。やはりなかなかの手練れと目されているらしい。調整が終わり、66,000円の支払いを済ませると私は言った。
「せっかくだから、持っている写真をとってもらってもいいですか」
「いいかなあ、私は写真下手なんですよねえ」
恐縮しながら翁が写真をとってくれる。
「大丈夫かなあ。私が写真をとっちゃって申し訳ないですねえ」
好々爺から受け取ったスマホを見ると、しっかりと目をつぶった私がヘフナーを抱えていた。
3.そしてヘフナー社は倒産する
購入すると早速、弦をポールマッカートニーが使っているというLa Bella 760FHB2というつるつるしたフラット弦に張り替えた。それから、バンド『精神ブラザーズ』の練習には、ヘフナーを抱えていくようになった。軽くて小さいので、持ち運びがかなり楽になった。2時間の練習を立ったまますることも、楽々できるようになった。つくりは値段にしてはかなり丁寧で、演奏性で特にコストパフォーマンスモデルであることを意識させられることはない。音のバランスとしては、4弦はどうしてもやや詰まった印象を与えるが、このモデル特有の特性というよりは、ショートスケールベース全般の特性といえよう。ポールはコントロールパネルの、「SOLO」、「BASS ON」のスイッチを入れる設定にしているという。この設定にすると音色はブーミーになる一方で上記の弱点をある程度カバーできる。合理的なセッティングなのだ。裏箔をとることや16分を意識したプレイをすることはこのベースでは、弦のテンションの関係から困難であり、なるほどポールのベースラインがきれいに4分、8分を刻むのはこういうわけかと、構造主義的に理解することができる。
そんなバンド練習をしたある日、恒例の練習後の飲み会(いつも練習よりこちらの方が長い)をしていると、ギターの「岡三」が言った。
「ヘフナー、倒産するらしいっすね」
えっ?
「ヘフナーってそのベースのメーカーじゃん!」
とボーカルの「Neoダイ」が言う。
慌ててスマホを取り出し検索してみると、「独ヘフナー社倒産」のニュースと、ポール・マッカートニー氏がそれに「とても残念な気持ち」とコメントを発表したという記事がヒットした。考えてみれば、カタログに掲載されたモデルがいつまでたっても入荷しないのも、ヘフナー社があまりうまく回っていないことを示す、倒産の前兆だったのかもしれない。
私が手に入れた小柄なベースは、ヘフナー社が生産した最後のモデルになるのだろうか。私はヘフナー社最後のモデルを、日本でもしかしたら最初に手に入れた人となったのだろうか。はたまたヘフナーはなんらかの形で救済され、たとえばほかの楽器メーカーのブランドとして存続していくのだろうか。まだ何もわからない。しかし私は当分の間、この小柄なベースをぶら下げてスタジオに通うことだろう。
その軽さにちょっとうきうきして、足取りも少しだけかろやかに。
おまけ:私がやっているバンド『精神ブラザーズ』のライブ映像
もっと読む:私が伝説のセッション・ベーシスト、キャロル・ケイにベースを習った記事はこちら
*1:通常のベースは弦を抑えたときと弦を抑えずに鳴らしたときで、音程だけでなく音色も微妙に違ってしまう。0フレットを採用することで、音色の違いを最小限に抑えることができる。
*2:ポールがヘフナーをメイン機に選んだのには、前述の「軽い」ことのほかに、当時のヘフナーが廉価で手に入る楽器だった点があるという。この意味で、私は完全にポールと同じ理由でヘフナーを手に入れようと思ったことになる。
*3:高田馬場を拠点に活動する4人組の「オルタネイティヴロックバンド」――ということになっているが、私はオルタネイティブロックが何かよく知らないし、たぶん精神ブラザーズの音楽性はオルタネイティブロックではないと思う
*4:ガイナックスが製作したOVA作品。ピロウズが音楽を担当した。
*5:ヘフナー社が製造する、やや丸っこい形状をしたベース。ティアーズ・フォア・フィアーズのカート・スミスが使っていた。
*6:バロネス・オルツィが書いた一連の探偵小説には「隅の老人」という探偵が登場する。この世界最初の安楽椅子探偵は、連作最終章で意外な正体を明かす。連作はおもしろいがややトリックがワンパターンなきらいもある。
月刊スーパーマン 第1巻 レビュー
かつて日本で発行されていたアメコミ雑誌『月刊スーパーマン』をレビューしていく。
昭和53年1月1日発行。
スーパーマン誕生
クリプトン星の爆発から地球への漂着、ケント夫妻に育てられスモール・ビルを出るまでをまとめた、映画でもおなじみのスーパーマン誕生秘話。
スーパーマンがスモール・ビルの住民たちにお礼として「スーパーケーキ」なる巨大ケーキをプレゼントするシーンが、なんとも古きよきアメリカン・コミックらしいおおらかさでよき。
太陽のプリンセス
スーパーガールことリンダ・ダンバースは大学院を卒業し、スクール・カウンセラーとして働くべくアテネ学園にやってくる。しかしアステカ帝国のプリンセス、トラカが世界征服のために地上最強の女スーパーガールをぶちのめしにきた! テレポートを使ってスーパーガールを翻弄するトラカだが、スーパーガールはトラカのテレポートのある法則に気づく!
戦闘の真っ最中に、力を蓄えるために座禅をくんで瞑想状態に入ってしまうトラカと、「この人、どうしちゃったの? でもこんなおかしなの相手にばっかしてられない」と言ってそのまま放置しちゃうスーパーガールのほのぼのバトル。
なぜスーパーマンは「正義の味方」なのか…?! 手塚治虫
鉄腕アトムはスーパーマンのエピゴーネンなのだ、というあっけらかんとしたカミングアウトから始まり、正義の味方モノにおける悪役の重要性を説くエッセイ。アトムを悪役にしようという声もあったなんて、驚き。
呪われたクリプトナイト
教授の実験(謎)の失敗によって、世界中のクリプトナイトが石になってしまった。スーパーマンは怖いものなし。クラーク・ケントは上司の方針で新聞記者からテレビレポーターに転身することに。レポート中に事件が起きてスーパーマンに変身! でもなぜだかいつもの力が発揮できず……。
地上最強のチーム
1952年の作品。スーパーマンとバットマンが最初にタッグを組んだストーリー。
船上で期せずして同室となってしまったクラーク・ケントをみながら、(すごいイモ! ムードこわれるー!)と思うブルース・ウェインがおもしろい(この雑誌の翻訳はかなりフリーダムです)。あと悪役は普通に「そうでゲスよ」って喋る。悪役すぎる。
Berryz工房ほぼ全曲レビュー:目次
Berryz工房ほぼ全曲レビュー『1st 超ベリーズ』 - みなみまなぶのブログ
Berryz工房ほぼ全曲レビュー『第②成長期』 - みなみまなぶのブログ
Berryz工房ほぼ全曲レビュー『スッペシャル! ベストミニ 〜2.5枚目の彼〜』 - みなみまなぶのブログ
Berryz工房ほぼ全曲レビュー③夏夏ミニベリーズ - みなみまなぶのブログ
Berryz工房ほぼ全曲レビュー『4th 愛のなんちゃら指数』 - みなみまなぶのブログ
Berryz工房ほぼ全曲レビュー『5 (FIVE)』 - みなみまなぶのブログ
Berryz工房ほぼ全曲レビュー:このレビューについて
このレビューの元になった原稿は、かつて同人誌として発表しようと執筆していたものです。Berryz工房の全楽曲をレビューするという、われながら野心的な試み。自分のツイッターを見返してみると、2019年には執筆を開始しており、2020年のコミケで頒布しようとしたものの落選、その後はコロナ禍もありコミケに出展していなかったためお蔵入りになっていたーーという経緯のようです。
歳月は流れて2025年1月3日、これまでサブスク配信を行っていなかったハロプロ所属アーティストの一部が、ついにサブスク解禁となりました。解禁となったアーティストの中には、メロン記念日や℃-uteと並んで、われらがBerryz工房も含まれています。この機を逃しては、この原稿はこのまま一生陽の目を見ることはないだろう。そう考えて、ブログでの公開に踏み切った次第です。
Berryz工房は活動期間を通じて、全10枚のオリジナル・アルバム(9枚のフルアルバム+1枚のミニアルバム)を発表しています。本稿は全10枚をレビューするつもりで執筆を開始したものですが、8枚目までの全77曲をレビューしたところで筆が止まっていました。また執筆を再開することもあるかもしれませんが、とりあえずは過去に執筆が終わっていたところまでを公開させていただきます。
サブスクで配信される名曲の数々を聴きながら、レビューを読んで「こんな聴き方があったか」、「こんな裏話があるのか」などと楽しんでいただける方が一人でもいらっしゃれば、執筆者冥利・ファン冥利につきるなあ、と考えています。
Berryz工房ほぼ全曲レビュー:参考文献
参考資料
①『HELLO! PROJECT COMPLETE SINGLE BOOK』, 2013, 音楽出版社
②「社長が訊く『リズム天国ゴールド』 つんく♂さん篇」, https://www.nintendo.co.jp/ds/interview/ylzj/vol2/index.html
③中山康樹, 『これがビートルズだ』, 2003, 講談社現代新書.
④『HELLO! PROJECT COMPLETE ALBUM BOOK』, 2015, 音楽出版社
⑤つんく♂オフィシャルサイト, http://www.tsunku.net/
⑥つんブロ♂芸能コース, https://ameblo.jp/tsunku-blog/
⑦アキバ総研, 「作曲家・橋本由香利 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人”第17回)」, https://akiba-souken.com/article/31452/
⑧YAHOOニュース, 「<カントリー・ガールズ>パワフルな17才、小関舞が感謝の気持ちを込めて「私たちの集大成のライブを一緒に楽しんでほしい」」, https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191225-00217306-the_tv-ent
インターネット
「NoTe -since 1998-」, https://notesince1998.blogspot.com/
Berryz工房ほぼ全曲レビュー『⑦Berryzタイムス』
(2011年3月30日)
つんく♂によれば、アルバムのコンセプトは「明るくいこうよ!」だという(⑤)。とはいえこのアルバムはコンセプトアルバムではなく、あまりこの発言を本気にしてはいけない。たしかにアップテンポな楽曲が多く、その中には「本気ボンバー!!」のようなベリーズ屈指の名曲も含まれているが、この傾向はあくまで結果論だ。前アルバムに続き、「イナズマイレブン」とのコラボが継続していたことからアップテンポな楽曲が多くなった程度の話で、狙ったものではないと見た。
むしろこのアルバムにおいて注目するべきは、メンバーの成長だ。菅谷以外のメンバーを、ボーカリストとして安定して運用することができるようになった結果、夏焼からの歌い出し(「一丁目ロック!」)やセンター熊井(「シャイニング パワー」)など、柔軟な布陣が可能になった。もちろん菅谷も、「ヒロインになろうか!」のキメをはじめとして、縦横無尽に歌唱力を発揮している。
繰り返しになるが、菅谷・夏焼・熊井・嗣永あたりの主力級はもちろん、職人肌の清水や、キャラに合った陽気な声を持つ徳永、そして自らの歌唱力について謙遜しがちな須藤ですら、凡百のアイドルグループにいたら「歌唱メン」とされるレベルなの。この時期には、さらに実力派底上げされている。
本アルバムに収録されているシングル「ヒロインになろうか!」では、グループ初となるオリコンデイリー1位を獲得。ベリーズ工房の快進撃が始まろうとしていた。
2011年のハロプロ
1月2日、モー娘。9期4人が加入
3月、アップアップガールズ(仮)結成
4月5日、東日本大震災を受けて、「がんばろうニッポン 愛は勝つプロジェクト」が発足
5月11日、吉川友がソロデビュー
8月24日、スマイレージに2期メンバーが加入。小川紗季が卒業を発表
9月1日、ハロー!プロジェクト モベキマス結成
9月29日、モー娘。10期4人が加入
9月30日、モー娘。高橋愛が卒業。モー娘。リーダー・ハロプロリーダーは新垣里沙に
12月15日、「萩原舞ですが、、、なにか??」放送開始
12月31日、スマイレージ前田憂佳が卒業
1.一丁目ロック!
アルバム一曲目、冒頭の歌い出しに、夏焼を持ってくる。この采配の時点で、「勝ち確」である。定石的には最初は菅谷だ。しかし、パンク・ロックに夏焼を合わせることにより生じる、絶妙な「軽さ」。これは菅谷にはない持ち味だ。次に菅谷を持ってくるかと思えば、なんと須藤を起用。しかし以外にも健闘し、疑似「菅谷」感を演出。その後に嗣永が控える。曲調とあいまって、疑似「Buono!」感が出てくる。サビ前のブリッジにきてお待ちかねの菅谷だ。あとは怒涛の大爆発。あえての定石崩しによる完璧な展開だ。
ex. SEX MACHINEGUNSの村井研次郎とJOEのコンビを呼んできてリズム隊を任せるという、徹底したパンクアレンジ。
2.ヒロインになろうか!
菅谷が歌うタイトルフレーズのためにある楽曲といっても過言ではない。構成は巧妙だ。サビは同じフレーズを二度繰り返すが、菅谷のキメは二巡目にしか出てこない。一巡目のサビでは、キメを期待しても、肩透かしを食らわせられる。期待がさらに高まったところで、二巡目のキメをぶつけるという計算だ。
最後のサビは、転調する。リリース前にハロコンで初披露されたとき、この曲に転調はなかった。ライブを聴いていたつんく♂が転調することを思いつき、再度レコーディングをおこない、転調部分を録りなおしたという(⑥)。この判断は絶対的に正しかった。そして、転調後の最後の最後のキメに熊井を起用した。この判断も絶対的に正しかった。
3.Bomb Bomb Jump
みんな大好きハロプロなんちゃってオールディーズ。アーリー60sっぽい気もするが、つんく♂のイメージはむしろ50sだという(⑥)。シュープリームスあたりのイメージか。
コーラスはルベッツの名曲、「シュガー・ベイビー・ラヴ」へのオマージュだろう(70年代の曲だが)。オールディーズ風にアレンジしようというときに、こういったコーラスや、あるいは微妙に音程の揺らぐシンセサイザーの音など、細かいところにまでこだわる。「神は細部に宿る」という言葉はあらゆる創作家が肝に銘じるべき名言だが、まさにこれこそが古き良きハロプロの「老舗の味」であり、多くの「楽曲派」の支持を集めたポイントだったのだ。
4.真っ白いあの雲
松浦亜弥に曲を書いていた頃のつんく♂を彷彿させるバラード・ナンバーだ。白い雲ときたら、どこか荒井由実を意識したりもするのかとも思う(「ひこうき雲」は松浦亜弥もカバーしていた)。
松浦亜弥を引き合いに出したが、こうしたしっとりしたバラードは、基本的にはソロアイドル向きである。バラードでの表情の出し方、アクセントの付け方には、ヴォーカリストによる個人差が大きく、グループアイドルが歌うと、ともすれば統一感のなさが出てしまうからだ。
夏焼をはじめとする多くのハロメンが、ライブでこの曲をソロカバーしているのは、無意識にこの点に気づいているからだろう。
5.本気ボンバー!!
「これぞベリーズ」という、ロック・ナンバーだ。「ベリーズのベスト盤をつくってください」と言われたら、絶対に入れたい一曲。
素晴らしさのキモは、シンプルなバンドサウンドにまとめつつも、手を抜かない編曲にある。ギターとハイハットだけのイントロから始まり、盛り上がりに合わせてメリハリよく、パートが足し引きされる。アレンジャーの板垣祐介はギターだけでなく、ベースまで演奏しているが、このベースラインも実にツボを心得ている。
PVではベリーズが、「ボン・ジョヴィくらいしか着ないですよ」というロック・ファッションに身を包んで、サボテンダーのような踊りをおどる。
6.女子会 The Night
つんく♂は「女子会」という言葉をつかってみたかったに違いない。しかし、歌詞を読んでみると、妙に女子会に対して批判的だ。それに、青春の定義を試みるのは、「女子会」ではなく、「吉田拓郎」の仕事ではないだろうか。これじゃあ「吉田拓郎 The Night」だよ。夜中にだらだら聴いていると楽しいラジオ番組かよ。
松浦亜弥の「ね~え?」あたりからうすうす気づいていたのだけれど、つんく♂ってば、女子の流行を取り入れようとして、でも微妙にズレてるもんだから、結果的に不思議な味わいの楽曲をつくり出すよね。この味わいがいいと思えるようになったら、もうハロオタとしては末期。引き返すことはできない。
7.ガールズタイムス
ジェームズ・ジェマーソンばりのモータウンベースが聴こえてくる。しかし、この曲の直接的な参照項はむしろ、広末涼子の「MajiでKoiする5秒前」だろう。「Majiで~」と「ガールズタイムス」、両曲に共通するのは、どことなく恋に浮かれているようなムード。
「ガールズタイム」ではなくて「タイムス」なのは、「女の子発行の新聞みたいなイメージ」とのこと(⑤)。「ニューヨークタイムズ」的なアレなんでしょうね。その日あった出来事を、仲の良い相手に報告するのは楽しいものだ。
全員が歌唱しているが、このようなかわいいウキウキ楽曲の常として、嗣永がイキイキしている。
8.女のプライド
つんく♂らしい、リズムを細かく刻むことが要求されるファンキーな楽曲。言葉をこねくりまわす嗣永とまっすぐに歌う熊井というボーカルの取り合わせが、対照的でなかなかおもしろい。
「テーマは「悔しくないもん」です。ま、悔しくないもんって言う分、実はかなり悔しいんでしょうなぁ」とはつんく♂の弁だが、ユングやフロイトもびっくりの、鋭い心理考察だ(⑤)。「いつかビッグになって、見返してやるから。フったことを後悔させてやる」という感情。意外と大きな原動力になったりして。
長めのピアノソロが入る、ハロプロ楽曲としてはやや珍しいアレンジがなされている。
9.シャイニング パワー
センター熊井という野心的なシングル曲。歌い出しの「あ」の音を「ぅわ」と発音する熊井の、ゴリッゴリのつんく♂歌唱にしびれる。要所要所で決めに入ってくるのは嗣永だ。反骨の弟子、嗣永にはつんく♂歌唱の影響がほとんどといっていいほど見られない。この辺の違いも、おもしろいところだ。
編曲を手がけたのはカッティングの名手、鈴木俊介。鈴木俊介による同様の路線は、二年後に Juice=Juice 「ロマンスの途中」で完成形となる。
熊井センターのPVは絵的にもおもしろいから観るべき。なぜか突然卓球が始まり、強引な編集技術によって、熊井の勝利が演出される。撮るの大変だっただろうな。
10.マジカルフューチャー!
アルバムのしめくくりに置かれているこの楽曲は、ゲーム「イナズマイレブン3 世界への挑戦 ジ・オーガ」の楽曲であったようだ。つんく♂自身の言によれば、もともとは「劇場版イナズマイレブン 最強軍団オーガ襲来」のサウンドトラック用に作曲したものであり、この音源はバージョン違いであるとのこと(⑤)
歌詞だけを見てみるとけっこうアツいのだが、ストレートなロックには仕上げずに(つんく♂は「力強いロックナンバー」と称しているのだが、そうは思えない(⑤))、これでもかとばかりにシンセサイザーを多用したところにつんく♂や制作スタッフのひねくれっぷり(天然か?)を感じないでもない。
Berryz工房ほぼ全曲レビュー『6th 雄叫びアルバム』
(2010年3月31日)
通常盤のジャケット写真を眺めてみてほしい。別にメンバーカラーというわけでもない衣装に身を包み、ベリーズたちがこちらを見つめている。しかし、彼女たちの表情に統一感はない。清水・徳永・夏焼は笑顔。熊井は少しだけ微笑んでいるが、菅谷は挑発するような顔で斜めを向いている。須藤は真顔。嗣永にいたっては、なぜか驚いたような顔をしている。
このジャケットの「ちぐはぐ感」は象徴的だ。本アルバムは、アニメ『イナズマイレブン』とのタイアップ曲で勢いよく幕を開ける。「雄叫び」と題されているので、このまま勢いよく突き進むのかと思いきや、突然演歌が流れ、ボサノヴァが流れ、果てはディスコやロックンロールまで流れてくる。
しかも、いつもの実験路線は、どこか違う。演歌調の曲なのに、ディスコ風にアレンジしてみたりなど、どこかちぐはぐな仕上げ方をしているような曲が目に付くのだ。
アルバムの発売は2010年。前年に「ハロプロ革命元年」を掲げ、ハローが大幅な体制変更を行った、その余韻の冷めやらぬ時期である。
完全な憶測になってしまうが、大幅な体制変更に伴って、他のグループに書いていた曲がベリーズに回され、リアレンジされた。そんな曲が何曲か入っているのではないか。
アルバムとしてはちぐはぐだが、そこはベリーズ。個々の楽曲やメンバーの歌唱など、見どころはしっかりとある。
2009・2010年のハロプロ
2009年(「ハロプロ革命元年」を掲げて活動)
3月31日、「エルダークラブ」メンバー全員がハロプロ卒業
4月、「S/mileage」結成
7月、有原栞菜(℃-ute)が卒業
10月、梅田えりか(℃-ute)が卒業
12月、久住小春(モー娘。)が卒業
2010年5月3日、メロン記念日が解散
12月、亀井絵里・ジュンジュン・リンリン(モー娘。)が卒業
11月~、ハロプロエッグメンバーが次々と卒業
12月30日、スマイレージが日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞
1.雄叫びボーイ WAO!
テレビアニメ『イナズマイレブン』のエンディングテーマ曲。メンバーたちは文字通りの雄叫びを挙げながら、菅谷を中心にドスのきいた歌唱を披露してくれる。
なんとこの曲、トラックダウンまでやっておきながら、「勢いが足りない」というつんく♂の判断によって、歌をレコーディングしなおしている。歌に対する妥協を許さないつんく♂の姿勢が伝わった結果としての、メンバーの迫力歌唱だ。
菅谷を堪能するためにあるといってもよい曲だが、夏焼や熊井もロック歌唱でサイドを確実に固めている。最後の「ワオ!」で素に戻る菅谷で、この人たちはアイドルだったのだと気づかされる。
2.ライバル
ベリーズたちの元気なかけ声が聴こえてくる。ライバルは自分だという、王道な応援歌ポップスだ。しかし、名曲中の名曲である。愛を歌う壮大さと、今日着る服で迷う日常との奇妙なバランスはつんく♂ならではだ。
作曲技法としても上手い。かけ声からのアタマサビ(冒頭にサビをもってくる手法)でリスナーをひきつけ、続くメロディはぐっと落ち着ける。友達の「軽さ」を嘆くブリッジでは、詞に対応するかのように不安げな進行に。そしてそこから爆発するかのような明るいサビだ。見事な展開というほかない。アレンジも含め、教科書のような曲だ。
ダンボールでつくられた楽器を抱えたメンバーたちが歌い踊るPVもかわいらしい。
3.流星ボーイ
この曲も『イナズマイレブン』のエンディングテーマだが、ハロプロリスナーとしてはむしろ、ダンス☆マンによる正統派ハロプロファンクであることの方が大事だろう。間違いようのないダンス☆マンのコーラスに乗って、ファンキーな演奏が跳ね回る。
しかしこの楽曲、メロディだけを取り出してみれば、さほどファンクっぽくはない。メロはむしろ演歌である。なぜこれをファンク風にアレンジしようと思ったのか。つんく♂によれば、「この楽曲のテーマは宇宙。やっぱ宇宙といえばダンスマンなわけで」ということらしい(⑥)。流星→宇宙→ミラーボール星→ダンス☆マンという思考回路だったということか。いつもながら理解に苦しむ。
4.愛には 愛でしょ
嗣永と夏焼の「みやもも」コンビが交互にボーカルをとる。二人の歌声は、ときによく似た声のように、ときにまったく違った声のように響く。夏焼は嗣永に、嗣永は夏焼に寄せた歌唱をしているようにも聴こえる。どちらかというと、二人とも普段の夏焼寄りの歌唱をしているような気もするが、おそらくは単に曲調の問題だろう。
Buono! でもチームを組み、ときに不仲な演技をしつつも、隙あらばイチャイチャしていた二人の関係性を象徴しているかのような絡みだ。
スローテンポにすれば、この曲も演歌風になりそうだ。平田祥一郎がうまくアップテンポな歌謡曲へとアレンジしている。
5.青春バスガイド
開幕早々、菅谷のねちっこい歌唱が光る。曲はシャ乱Q楽曲を彷彿とさせる、いかにもなつんく♂節だ。バスガイドをテーマにするという「ハズシ」感も、「ラーメン大好き小池さん」までをテーマにしていたシャ乱Q的な「ハズシ」方だ。あと、サビの決めフレーズ、すごく気持ち悪いです。一体何に生まれ変わろうとしているんじゃ!
メンバーが学ランを身にまとって男子学生に扮するPVでは、なぜかテレビ東京の大江麻理子アナウンサーがバスガイド役として出演している。
しかもレコーディングではわざわざツインギターを起用している(高橋諭一・高山一也)。細部まで気を配った力作。
6.君の友達
ボサノヴァ風のギターに乗って、メンバーたちがゆったりと歌唱する。サビで急にビートが32分(?)を刻み、テンポアップしたかのように見せかけるという、なんちゃってプログレだ。
好きな子にアプローチしているけれど、なぜかその子の(あまり好きではない)友達から好意を寄せられてしまうという、「あるある」なのかもしれないが、普通それで詞を書こうとは思わないシチュエーションを歌っている。つんく♂は、歌というものが常に「君へのラブソング」である必要はないのだという自由に気づかせてくれる。
1番Aメロ、サビの2フレーズ前の嗣永のフェイク「いーいぃいい~」(0:48~)が絶品。
7.グランドでも廊下でも目立つ君
もしこの曲を嗣永が歌っていたら、ぶりぶりなアイドルソングになっていたはずだ。しかし、つんく♂(が決めたのかどうか知らないが)はあえて熊井&須藤の「くまぁず」コンビを起用した。
ボーカリスト熊井のすばらしさについては今までにも書いたので、ここでは触れない。
自分の歌唱力を謙遜することが多かった須藤だが、この楽曲では(ピッチ補正やエフェクトは当然かけられているとは思うが)難なく歌唱をこなしている。力強い持ち味も出ていて、グッドだ。ハロプロの層の厚さのために目立たなかったが、須藤とて凡百のアイドルグループにいたならば、「歌唱メン」と呼ばれる程度の実力はあったのではないか。
8.友達は友達なんだ!
「お昼の休憩時間」の項でも触れたが、つんく♂にとって「恋人」と「友達」という二項対立は、重要なテーマのようだ。「つんく♂にとって」と書いたのは、この曲の歌詞も、ベリーズのような少女たちが話すような内容というよりは、むしろつんく♂のような大人の男が話しているような内容だと思うからだ。「あいつも結婚して、なかなか飲み会にも顔出してくれなくなってよお。でも仕方ねえよな、友達よりも奥さんだよな」という話でしょう、これって。
でも、メンバーからの評判も高かった(つんく♂談)らしいし、よくわからないな……(⑥)。案外こういう話題は年齢性別を問わず普遍的なのだろうか。
9.希望の夜
アコースティックピアノにのせて、メンバーがユニゾンでメロディを歌うという、ベリーズにはめずらしい構成の楽曲。コーラスも、メンバー(清水)によるもののようだ。
ここで仮説だが、この「希望の夜」は、前アルバムに収録されていた「BE」の兄弟曲なのではないか。「BE」で歌われていたのは「朝」、そして一方は「希望の夜」だ。「希望の夜」では、過去から現在までの歩みを振り返るような詞が登場する。「BE」の子供たちが大人になって歌っているのが、「希望の夜」なのではないか。ダメ押しに編曲者を確認すると、両曲ともバラードの名手、湯浅公一(他に「赤いフリージア、「安心感」など)による編曲だ。意図的か、偶然か。
10.抱きしめて 抱きしめて
四つ打ちの重低音がビートを刻む。つんく♂は、この「炸裂するDISCOサウンド」路線に「ニッチ」を見出したらしい(⑤)。しかし、これは果たして純粋なディスコサウンドだろうか。たしかにアレンジはそうかもしれないが、楽曲には様々な成分が散りばめられている。マイナー調のメロは演歌風だし、転調しながら上がっていくサビは懐かしのTK(小室哲哉)サウンドを彷彿とさせる。
たとえば、星部ショウに「ディスコ」風の曲をオーダーすれば、よく勉強した末に、不純物なしの「ディスコ」楽曲を書いてくるだろう。一方で、色々なエキスが混ざり合っているこの「ごった煮」感。これこそが、つんく♂楽曲の魅力なのかもしれないが。
11.ヤキモチをください!
RCサクセションに砂糖をまぶしてぐつぐつ煮詰めると、こんな味のジャムが出来上がるのではないか。そんな甘々なロックンロールだ。
ボーカルは清水・徳永・菅谷だが、菅谷さえも「甘々」なトーンで歌っているのには驚かされる。「コブシを抑える」という芸当もできるのだ、この人は。
歌割がいちばん多い清水は、楽しんで歌っている。ちょっとめんどくさく甘えたがる女の子を主人公とした詞が、本人のキャラクターにも合ったのだろう。つんく♂も「この曲では甘えんぼなところがよく出てます」と看破している(⑤)。ライブの映像を見ても、この曲では本当に生き生きしているのだ。
12.私の未来のだんな様
シーズンごとに様々な行事があるけど、ひとりは寂しい。未来のだんな様はどこにいるの? という、いってしまえばそれだけの曲なのだが、いやはや、詞の発想がすさまじい。是非一度じっくり歌詞を読み直してみてください。つんく♂ワールドにくらくらすること間違いなしだ。
たたみかけるような歌詞に合わせるように、アップテンポで押せ押せなアレンジになっており、聴いていると詞・曲両面で圧倒されてしまう。編曲は平田祥一郎。打ち込みサウンドではあるのだが、ドラムの音源として生音風のものをチョイスしているのがおもしろい。「合コン」が延々とエコーするブリッジにもくらくら。
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